「なんという空しさ、すべては空しい。わたしは太陽
の下に起こることをすべて見極めたが、見よ、どれも
みな空しく、風を追うようなことであった」
(旧約聖書『コヘレトの言葉』1章2節と14節より)
デュラスはこの言葉が気に入っていて、最後の著作
でも次のように引用した。
「この二つの文章だけで世界が開かれる──
事物、風、子供たちの叫び声、その叫び声の中で消え
ていった太陽。世界は自己破滅にむかっている。
空の空なるかな。万事空にして、風を追うが如し」
(『これで、おしまい』マルグリット・デュラス)
この世でもっとも空しいもの、それは戦争だろう。
しかし、今日もまた戦争で子供たちが殺されている。
未来が消されていく。
この作品の舞台は核戦争後の世界だ。
生き残ったのは女二人と男一人。女たちには記憶が
なく、男は戦争の記憶でがんじがらめになっている。
戦争は男の頭のなかに閉じ込められて、力を失って
いる。彼女たちは、男を恐れ、話しかけ、もてあそび、
忘れる。
彼女たちには子供があったが、今ではいない。
彼女たちは、あらたに生まれてくる子供たちのため
に言葉を残そうとする。
それは新しい人類が生きのびるための言葉であり、
もう二度と同じ過ちを繰り返さないための言葉だ。
言葉は、ひとを変えることができるだろうか。
長野和文
■スタッフ
演出/美術・・・・・長野 和文
照 明・・・・・・安達 直美
音 響・・・・・・髙沼 薫
舞台監督・・・・・・高橋 佑太朗
制作協力・・・・・・三熊 こうすけ
宣伝美術(画)・・・松本 潮里
記録写真・・・・・・鏡田 伸幸
記録映像・・・・・・井野口 功一
企画制作・・・・・・池の下
■キャスト
A・・・・・・・・・・・芹澤 あい
B・・・・・・・・・・・稲川 実加
男・・・・・・・・・・・深沢 幸弘
■協力
こもだまりこ(昭和精吾事務所)
ロングランプランニング株式会社
■助成